彼は彼ではなく、父親の亡霊として生まれ出た。

 尾崎豊はまったく好きではない。中学生の頃は大きな反抗期を迎えていたので、彼の歌詞に共感していたけれど、高校生になり、ふと気づけば尾崎の矛盾点ばかり目について、本当の不良じゃないじゃんという認識になり、以来大嫌いになった。

 彼のナルシシストっぷりも異常だし、あんな中高生のカリスマ的存在にのし上がったのに斉藤由貴と不倫をしていたりするなど、訴求と行動がちぐはぐなのもなんだろうコイツと、私の中の低い位置に堕落していった。

 それぐらい尾崎豊は嫌い。そして彼の息子が、尾崎の生まれ変わりのようにデビューしてきた。顔は父親を彷彿とはさせないが、歌う声が尾崎豊そっくり。というかほとんど本物。半分本物だから似るのは当然なんだろうけれど。

 それでもね、この息子、将来はどうするんだろう。私たち世代に尾崎ファンはいまだ棲息しているからなんとかお金になるだろうけれど、今後息子に新しいファンはつく可能性はあるのだろうか。アラフィフのおじさんおばさんにガードされた若い歌い手を、彼と同世代の人たちは好きになるだろうか。

 息子は父親を越えていくとかなんとかを耳にするけれど、この尾崎豊の息子は、父親が眠る棺桶に自ら入って横たわり、そこから歌を歌っているようにしか思えない。尾崎豊のファンが息子を通して生前の彼を見ているのを承知で、父親を演じている息子。

 息子が尾崎豊の亡霊のように見えてくる。